人ごみって演出のおかげで

何の迷いもなく行動できたってとこかな。

それからしばらく歩いて、俺達は見やすい場所をキープした。

“どどーん”

何発もの大きな花火が打ち上げられる。

「きれ―」

「うん―」

「―来年もこよーねー」

「―うん」

俺は夜空を飾る何色もの花火に思いでを一つ一つ重ねていった。

奈緒に出会ってよかった、

幸雄に出会ってよかった、

麻紀に出会ってよかった、
・・・・
いろんな奴がいたよ。

そして、みんな精一杯生きてる。

いろんなこと知ったよ

奈緒からはやさしさとか・・・何より愛情とか

幸雄と麻紀からは信じ合うこととか

俺は人に何を伝えられるだろう。

「来年も連れてきてやるよ。」

歓声とともに大きな花火が、空いっぱいに広がった。

その音に、俺の声は消されちまって・・・

「え?、何?、聞こえなかったよ―、なんて言ったの?」