一人は別のクラスの【佐藤俊一(さとうしゅんいち)】だった。

佐藤というのは男には評判が悪かった。

…が、女には信じられねーくらい評判がよかったんだ。

そういうところ、俺は気に入らなかったけどね。

こいつは絶対に弱みを見せなかったよ。

勉強だろうが部活だろうがいつもいい位置にいた。

そういうのを【頑張り屋】って女は憧れてるみたいだ

男にしてみりゃ付き合いの悪いやつはみんな【いけすかねー野郎】になっちまうんだよ。

まさに佐藤はこれで。

別にかっこつけてるわけじゃないのにキザに見えて、

【いけすかねえ野郎】

こんなんじゃいけねえっていう気になった俺は、佐藤をゲームセンターに誘ったりしたよ。

俺達なりの好意だった。

なのに佐藤は俺達を軽蔑していた。

「俺がなんでおまえらの相手しなきゃいけねえんだよ」

佐藤は一言言って帰ろうとした。

カァーッと血がのぼって

佐藤の肩を掴んだね

「俺達の何をしってるんだ!おまえはそんなに偉い奴なのか」

俺はこういう時、手の方が先にでちまうから

佐藤はいつの間にか足元に ぶっ倒れてた。

もちろん 奈緒がコイツに恋焦がれているって聞いた時から、尚一層敵みてーに思ってる。

噂じゃ奈緒は三年くらいこいつに片思いしてるらしかった。

あいつのハッキリしない態度のせいでね。

俺は迷ったよ何日も何日も。

奈緒に好きな男がいるなら諦めてもいい。

けどよりによって相手が佐藤じゃ

おさまる気もおさまらないかといって無理に振り向かせたって、

結局、幸せになんかなれねえよなって、

お互いつまんねーよなって、

でも、俺は迷いに迷って結論をだしたのさ。

【振られるのが怖くて男がやってられるか】

この時の決心で俺は

はじめて幸雄に相談した。

幸雄は 俺の気持ちを見抜いていた。

「だと思ったよ、心配ねえんじゃねーの、頑張んな」

幸雄はサラっと言いやがった。

俺は内心複雑だったよ

奈緒と噂になってる男のもう一人が幸雄だったからさ。