弱くなかったら彼女じゃない、

捻くれてなかったら彼女じゃない、

頑固じゃなかったら彼女じゃない、

不器用じゃなかったら彼女じゃない、

僕は時が止まればいいなと思いながら

彼女とカラオケの画面を首が折れるくらい一生懸命に交互に見ていた。

その時・・
曲の途中で急に彼女の美声がかすれその後に・・・、

マイクが勢いよく床に落ちる、その音だけがやけに響いた・・・

そして全ての音が消えた。

しかし、僕は別に驚くわけでもなく、

振り返った奈緒の細い眼の中に隠された潤んだ瞳を見つめた。

彼女は、クイーンサイズのベットに寄り掛かかり、片膝を立て、ブランデーを片手に気取っている

僕に、そっと近づいてきた。

僕は呟いた・・

「どうしたの?」

彼女は耳元で、

というより、力が抜けて倒れこむように顔を伏せ

「もう歌いたくない」

そうキッパリと言った。