サマーリボン − つながるきずな −

side:茜

午後の観光が終わって、ホテルに戻った。
ロビーのソファで休んでいると、ステラお姉ちゃんとお父さんが並んで座っているのが見えた。
お母さんも隣にいて、三人で静かに話している。

私は遠くから見ていたけど……耳が勝手にそっちに集中してしまう。

「——伊代」
お父さんがそっと口を開いた。
「小さい頃、おまえを置いてきてしまったことを……ずっと悔やんでた」

ステラお姉ちゃんは少し目を伏せて、それからゆっくり顔を上げた。
「……I know. Grandma told me. But I’m fine now.」
英語混じりの言葉だったけど、意味は伝わった。

お母さんが優しくステラの手を取った。
「伊代ちゃん。私も……あなたに会える日を、ずっと待ってたのよ」

ステラは一瞬、驚いたようにお母さんを見つめ、それから小さく微笑んだ。
「Thank you… Mom.」

——“Mom”。
その言葉を聞いたとき、私の胸がじんわり熱くなった。
ステラお姉ちゃんにとっても、お母さんはちゃんと“母親”なんだ。

お父さんは目を潤ませながら言った。
「遅くなって、ごめんな。でもこれからは……一緒に過ごしたい」

ステラは一拍おいてから、ゆっくりうなずいた。
「Me too. Family… together.」

おじいちゃんと同じ言葉をステラが口にして、三人は自然に笑い合った。

* * *

私は咲に小声で言った。
「……ねえ、見た?」
「うん。なんか、ずるいよね」
「え?」
「大人たちばっかり、泣いたり笑ったりしてさ。私たちだって、言いたいこといっぱいあるのに」

咲の言葉に、私はハッとした。
——そうだ。
私たち“子ども組”の気持ちも、ちゃんと伝えなくちゃ。

そう心に決めた。