飛行機に乗るのはこれが初めて。
それが、いきなり12時間超えのロンドン便なんて……!
成田空港から飛行機に乗って、丸半日。
眠ったり、眠れなかったり。
機内食は意外とおいしかったけど、トイレの場所がよくわからなくてドキドキしたり。
そんなこんなで、気づいたらイギリスに着いてた。
「着いた……!」
思わず声が出ると、隣の葵兄が小さく笑った。
「まだ降りてないけどな」
そう言いながらも、葵兄の目もどこか遠くを見ていた。。
ロンドン・ヒースロー空港。人がたくさんいて、見たことない風景ばかり。
広くて、キラキラしてて……空気の匂いまで違う気がする。
家族みんな、どことなく緊張してて静かだった。
中でも一番そわそわしてるのは、お父さん。
「確か、この辺に……母さんが迎えに来てるはずなんだけど……」
——でも、どこ見ても知らない顔ばかり。
おばあちゃんがどんな人か、ちゃんと知らないし……写真とか、ないし……。
咲姉が小声で言った。
「どうする? もし迷子になってたら……」
「お姉ちゃん、やめてよそういうこと言うの!」
そんなとき——
「タクヤ、ミユ、アオイ‼︎」
聞きなれない英語の発音で私たちの名前を呼ぶ声。
声の方を向くと、背筋のしゃんとした女性が立っていた。
シルバーグレーの髪をきちんとまとめ、深いブルーのワンピースを着ている。
母が私たちに耳打ちする。
「……おばあちゃんよ」
「Mother!!」
お父さんが、パッとその人に駆け寄っていった。
「ひさしぶりだね……元気だった?」
「元気よ!あなたも美優さんも変わってないわ〜!」
「葵も久しぶり!大っきくなったわねー!
昔はステラと同じくらいの身長だったのに!!
やっぱり男の子は身長が伸びるわねー!!」
と言われて葵兄は苦笑いしてた。
それから、ふと私たちの方を見て、にっこり。
「あら、咲さんと茜さんね?やっと会えたわね!」
その声が、やわらかくて温かくて、緊張がふっとほどけた気がした。
「朝霧 咲です!よろしくお願いします!」
「茜です!えっと、あの、よろしくお願いします!」
「ふふふ、そんなにかしこまらなくて大丈夫よ。私のことは“おばあちゃん”って呼んでくれたら嬉しいわ」
咲と私は顔を見合わせてから、ちょっと照れながら言った。
「「おばあちゃん……」」
「うん、よく言えました!」
嬉しそうに笑うおばあちゃんを見て、
ああ、この人が“伊代お姉ちゃん”を育ててくれたんだな、って思った。
「Wellcome to England!」
おばあちゃんの声は柔らかくて、でも力強かった。
母はすぐに日本語で説明してくれる。
「おばあちゃん、ステラは家で待ってるって。あなたたちに会えるの、すごく楽しみにしてるって言ってるわよ」
そんな和やかな空気の中で、もうひとつ面白いことが。
荷物をまとめて空港の外に向かおうとしたとき、
おばあちゃんがふと咲姉の方を見て、首をかしげながら笑った。
「咲さんって、名前は“さく”って読むのよね?」
「はい? あっ、そうです。“さく”ですけど……」
おばあちゃんが小首をかしげて笑った。
「ステラがね、いつも“さき”って呼ぶのよ。何度も“さく”よって言っても、なんか納得してないの。たぶん、“さき”のほうが可愛いって思ってるんじゃないかしら?」
「えっ!? あの、伊代お姉ちゃんが?」
咲姉が耳まで赤くなって、まんざらでもなさそうな顔。
「うわ……咲姉、絶対気に入られてる……」
「ふふ、さぁ行きましょうか。車で少し走ったところに家があるの」
「うん!」
私たちはスーツケースを引っ張って、おばあちゃんの案内で空港の出口へと向かった。
それが、いきなり12時間超えのロンドン便なんて……!
成田空港から飛行機に乗って、丸半日。
眠ったり、眠れなかったり。
機内食は意外とおいしかったけど、トイレの場所がよくわからなくてドキドキしたり。
そんなこんなで、気づいたらイギリスに着いてた。
「着いた……!」
思わず声が出ると、隣の葵兄が小さく笑った。
「まだ降りてないけどな」
そう言いながらも、葵兄の目もどこか遠くを見ていた。。
ロンドン・ヒースロー空港。人がたくさんいて、見たことない風景ばかり。
広くて、キラキラしてて……空気の匂いまで違う気がする。
家族みんな、どことなく緊張してて静かだった。
中でも一番そわそわしてるのは、お父さん。
「確か、この辺に……母さんが迎えに来てるはずなんだけど……」
——でも、どこ見ても知らない顔ばかり。
おばあちゃんがどんな人か、ちゃんと知らないし……写真とか、ないし……。
咲姉が小声で言った。
「どうする? もし迷子になってたら……」
「お姉ちゃん、やめてよそういうこと言うの!」
そんなとき——
「タクヤ、ミユ、アオイ‼︎」
聞きなれない英語の発音で私たちの名前を呼ぶ声。
声の方を向くと、背筋のしゃんとした女性が立っていた。
シルバーグレーの髪をきちんとまとめ、深いブルーのワンピースを着ている。
母が私たちに耳打ちする。
「……おばあちゃんよ」
「Mother!!」
お父さんが、パッとその人に駆け寄っていった。
「ひさしぶりだね……元気だった?」
「元気よ!あなたも美優さんも変わってないわ〜!」
「葵も久しぶり!大っきくなったわねー!
昔はステラと同じくらいの身長だったのに!!
やっぱり男の子は身長が伸びるわねー!!」
と言われて葵兄は苦笑いしてた。
それから、ふと私たちの方を見て、にっこり。
「あら、咲さんと茜さんね?やっと会えたわね!」
その声が、やわらかくて温かくて、緊張がふっとほどけた気がした。
「朝霧 咲です!よろしくお願いします!」
「茜です!えっと、あの、よろしくお願いします!」
「ふふふ、そんなにかしこまらなくて大丈夫よ。私のことは“おばあちゃん”って呼んでくれたら嬉しいわ」
咲と私は顔を見合わせてから、ちょっと照れながら言った。
「「おばあちゃん……」」
「うん、よく言えました!」
嬉しそうに笑うおばあちゃんを見て、
ああ、この人が“伊代お姉ちゃん”を育ててくれたんだな、って思った。
「Wellcome to England!」
おばあちゃんの声は柔らかくて、でも力強かった。
母はすぐに日本語で説明してくれる。
「おばあちゃん、ステラは家で待ってるって。あなたたちに会えるの、すごく楽しみにしてるって言ってるわよ」
そんな和やかな空気の中で、もうひとつ面白いことが。
荷物をまとめて空港の外に向かおうとしたとき、
おばあちゃんがふと咲姉の方を見て、首をかしげながら笑った。
「咲さんって、名前は“さく”って読むのよね?」
「はい? あっ、そうです。“さく”ですけど……」
おばあちゃんが小首をかしげて笑った。
「ステラがね、いつも“さき”って呼ぶのよ。何度も“さく”よって言っても、なんか納得してないの。たぶん、“さき”のほうが可愛いって思ってるんじゃないかしら?」
「えっ!? あの、伊代お姉ちゃんが?」
咲姉が耳まで赤くなって、まんざらでもなさそうな顔。
「うわ……咲姉、絶対気に入られてる……」
「ふふ、さぁ行きましょうか。車で少し走ったところに家があるの」
「うん!」
私たちはスーツケースを引っ張って、おばあちゃんの案内で空港の出口へと向かった。



