サマーリボン − つながるきずな −

空港での再会を果たしたあと、私たちは大きなスーツケースを積み込み、家に向かった。
夕方の高速道路はオレンジ色の光に包まれていて、どこか特別な雰囲気。
助手席に座ったステラお姉ちゃんは、ずっと窓の外を見つめていた。

「Is this Tokyo?」
「うん。ここは東京」
咲姉が得意げに答える。

「Buildings are so tall… and so many cars!(建物が高いし、車も多いわね)」
「そうそう、渋滞なんてしょっちゅう」
お父さんが笑うと、ステラお姉ちゃんも「なるほどね」とうなずいた。

車の中は、なんだかずっとにぎやかだった。
ステラお姉ちゃんが英語で感想を言うと、咲姉が張り切ってカタコトの英語で答えたり、
お母さんが横から通訳したり。
葵兄だけは窓にもたれて無言だったけど、たまにステラが振り返ると、わざと目をそらしていた。

——そういうやり取りも、なんだか微笑ましかった。

* * *

やっと家に到着したとき。
玄関の前に立ったステラお姉ちゃんは、深呼吸をしてから、静かに「ただいま」と言った。
その声があまりに自然で、私の胸はじーんと熱くなった。

「おかえり!」
思わず叫ぶと、ステラお姉ちゃんが驚いたように私を見たあと、ふわっと笑った。
「……ありがとう、茜」

その笑顔を見ただけで、ああ、本当に“家族”なんだって思えた。

* * *

リビングのドアを開けると、そこには我が家の秘密兵器——こたつが待ち構えていた。
「ステラ、これが日本の冬の味方だよ」
咲姉が胸を張る。

ステラお姉ちゃんは首をかしげつつ、恐る恐る座布団に腰を下ろし、足をこたつに入れた。

「……!! Warm!!」
びっくりした声に、みんなで大笑い。

「気をつけないと、二度と出られなくなるからね」
咲姉が冗談を言うと、ステラお姉ちゃんは真剣な顔でこたつの中を覗き込み、
「It’s dangerous… but I like it(危険だけど好き)」
とにっこり。

「こたつの魅力に、またひとり落ちたな……」
葵兄がぼそっとつぶやいて、私はくすっと笑った。

* * *

夕食は、母が数日前から準備していた“おもてなし和食フルコース”。
食卓には、天ぷらの盛り合わせ、肉じゃが、ほうれん草のおひたし、そしてにぎり寿司まで並んでいた。

「うわ……料亭みたい!」
咲姉が感嘆の声をあげると、母はちょっと照れながら「せっかくの初日だからね」と笑った。

ステラお姉ちゃんはお箸に苦戦しながらも、一つひとつ大切そうに口に運んでいた。

「Miso soup… gentle taste(優しい味ね)」
「Tempura… crispy and light!(サクサクで軽い!)」

ひと口ごとに感想を言うので、母もお父さんも嬉しそうにうなずいていた。
その様子を見て、私も誇らしいような気持ちになった。

* * *

夕食後。
ステラお姉ちゃんは、荷ほどきの合間に私の部屋へやってきた。

「Can I come in?」
「もちろん!」

ベッドに腰かけたステラお姉ちゃんは、ふと窓の外を見て、ぽつりとつぶやいた。
「……夢みたい」

「私も」
私は笑って答えた。
「空港で“ただいま”って言ったとき、本当に帰ってきたみたいだった」

ステラお姉ちゃんは少し目を細めて、
「うん。ここにいると……本当に“家族”だって感じる」
とつぶやいた。

その言葉が、心の奥までじんわり染み込んでいくようだった。

「……ステラお姉ちゃん」
「なに?」
「会えてよかった」

私がそう言うと、ステラお姉ちゃんは一瞬きょとんとしてから、ふわっと微笑んだ。
「私も。茜、ありがとう」

その笑顔を見ながら、私は思った。
——これからの日々が、もっと楽しみになってきた。