サマーリボン − つながるきずな −

翌日。
 朝からキッチンはにぎやかだった。
 ステラが大きなエプロンをつけ、レシピ本を開きながら材料を並べている。

「Today, we cook Japanese food together!(今日は日本料理を一緒に作るわよ!)」
 ステラの声に、私と咲は思わず笑顔になった。
 テーブルには、米、卵、海苔、そして見慣れたしょうゆの瓶。

「What are we making?(何を作るの?)」と葵。
「Tamagoyaki, miso soup, and onigiri!(卵焼きと味噌汁、おにぎりよ!)」
 ステラが答えると、咲が「やった!」と両手を上げた。

 まずはおにぎり。
 ステラが炊きたてのご飯を手にとると、「Hot!(熱っ!)」と笑いながら形を作ろうとするけれど、いびつな三角になってしまう。
「Like this.(こうやってね)」
 葵が手を添えて形を整える。
「Ah… better!(あ、上手くなった!)」
 その笑顔は、昨日よりもっと自然だった。

 次は卵焼き。
 フライパンに卵液を流し入れるステラの動きは慎重で、見ているこっちまで緊張する。
「Roll it… slowly…(巻いて……ゆっくり……)」
「Like sushi?(お寿司みたい?)」
「Kind of!(まあ、そんな感じ!)」
 巻き上がった卵焼きは少し形が崩れていたけれど、黄金色でおいしそうだ。

 味噌汁は、咲と私が担当した。
 だしの香りが部屋いっぱいに広がり、ステラが深く息を吸い込む。
「Smells so good…(すごくいい匂い…)」
「It smells like home.(家の匂いみたい)」
 その「home」という言葉が、心にじんわり染みた。

 できあがった料理をテーブルに並べ、みんなで食べる。
 ステラが箸を使ってぎこちなく卵焼きを口に運ぶと、嬉しそうに笑った。
「I made this… with my family.(これ、家族と一緒に作ったんだ)」
 その声は、誇らしさと少しの照れくささでいっぱいだった。