サマーリボン − つながるきずな −

side:茜

夕方。
ステラお姉ちゃんの家のダイニングは、テーブルにごちそうがずらりと並んでいた。
ローストビーフに、サラダ、パンにスープ……そしておばあちゃん特製のちらし寿司まで!
イギリスと日本の料理が同じテーブルに並んでるのが、なんだか夢みたいだった。

「わぁー!おいしそう!」
咲姉が目を輝かせると、お母さんが笑った。
「みんなで食べると、もっとおいしくなるのよ」

おじいちゃんは赤い顔でワインのグラスを持ち上げた。
「よし、乾杯といこう! 伊代(ステラ)、みんなでこうして集まれる日を夢見てたんだぞ」

「Grandpa…」
ステラお姉ちゃんが照れくさそうに笑う。

「じゃあ——乾杯!」

グラスやジュースのコップが重なって、楽しい音が鳴った。

* * *

食事が始まると、もう大騒ぎだった。
咲姉は「このチーズ、めっちゃおいしい!」と大はしゃぎだし、葵兄は「寿司とパンを一緒に食べるな!」って突っ込んでる。
でも気づいたら本人もパンにちらし寿司をのせて食べてて、みんなで大笑いした。

お父さんは真剣な顔でワインを飲みながら「やっぱりローストビーフは本場が違うなぁ」って感心してるし、お母さんは「茜、もっと食べなさい」ってお皿にどんどん盛ってくる。

ステラお姉ちゃんはというと、隣に座った私にそっと耳打ちした。
「ねぇ……家族って、にぎやかでいいわね」

「うん!」
私は思わず大きな声で返事をした。
「これからはずっと一緒ににぎやかにしようね!」

お姉ちゃんが笑って、私も笑って。
その笑い声が、食卓のざわめきに混ざって広がっていった。

* * *

やがて、ステラお姉ちゃんがピアノの前に座った。
おばあちゃんが「一曲お願いね」とリクエストしたのだ。

流れ始めた旋律は、やさしくて、どこか懐かしい。
気づいたら咲姉が歌を口ずさんで、私も声を合わせていた。

葵兄はぶつぶつ言いながらも、指でテーブルをリズムに合わせて叩いている。
お父さんとお母さんは、並んでうなずき合っていた。

——その瞬間。
ふたつの家が、本当にひとつにつながった気がした。