サマーリボン − つながるきずな −

茜 side

「なに見てんのー?……うわっ、なつかし!」

「でしょ、でしょ?この葵兄の顔、マジで死んでるわ〜」

夏休みのある日。
私は、物置からアルバムを引っ張り出してきて、“家族についての作文”のネタ探しをしてたところ。
そこに、姉の咲がひょっこり顔を出したってわけ。

あ、改めて自己紹介!
私は小学5年生の朝霧 茜(あさぎり あかね)。
一個上の姉、**朝霧 咲(さく)**とは…まぁ、なんだかんだ仲良し姉妹。たぶん。

そして、話題に出てる「葵兄」は、私の7歳上。現在高校2年生。
別に嫌いってわけじゃないんだけど、なんか苦手…。
いつもニコニコしてて、何考えてるのかいまいち読めないタイプ。
家族の中で唯一、父譲りのグレーの髪色をしていて、顔立ちもすっごく整ってる。まさに“ハーフ顔”。

咲がアルバムをめくりながら、言った。

「前のページも見てみよっ!なんか、葵兄の黒歴史とかあったりして!」

「そんな都合よくいくかな〜……」

でも、ページをめくった瞬間。

「ん? ……誰、これ?」

1枚の写真に目がとまった。
そこには、葵兄と並んで写ってる女の子。私たちと同じくらいの年に見えるけど——。

「葵兄に……そっくり⁉︎」

「うわ、やばっ!双子レベルじゃん!!」

「髪色も同じだよ……!」

——そのとき。

「何をそんなに騒いでるの?」

2階から降りてきたのは、まさにその葵兄本人。
どうやら、うるさすぎて様子を見に来たらしい。

咲姉が勢いよくアルバムを指さした。

「ねえ、この子だれ? 葵兄にそっくりなんだけど!」

最初はキョトンとしてた葵兄だったけど、アルバムを見て、写真を見た瞬間、すぐにピンときた様子で——

「……ああ、伊代(いよ)のことか」

「伊代さん……?」

ちょうどそのタイミングで、1階にドタドタと足音。
お父さんとお母さんまでやってきた。

「どうしたー?」

「ケンカでもしてんのか?」

「はぁ?してないし」

「ほんとサイテー」

私と咲は同時にお父さんを睨んだ。
喧嘩扱いとか、心外すぎる。

「……っていうかさ」

私は咲の方を向いてから、もう一度アルバムに目を落とす。

「伊代さんって、誰?」

すると、お母さんとお父さんは顔を見合わせて、言った。

「え? 伊代って……あなたたちの姉よ?」

「「……えっ⁉︎」」

「そんなの聞いてないんだけど!!」

「言ってなかったか?」

「うそでしょ!?」

「咲は小さい頃、一緒に住んでたじゃないか」

「えっ……私、覚えてないけど?」

「確か、2ヶ月くらいだったっけ?」

「2ヶ月て!そりゃ覚えてないわ!」

咲も私もショックを受けてると、突然お父さんが言った。

「……よし、じゃあ会いに行くか!夏休みだしな!」

「「えっ……」」

「「やったー!!」」

その時だった。
後ろで「ふっ」と吹き出すような小さな声。

振り向くと——

葵兄が、顔を赤くしてそっぽを向いていた。

お母さんが笑いながらこっそり言った。

「ふふ、葵はね、妹たちの前では“良いお兄ちゃん”してるけど、本当は口悪くて無愛想なのよ。でも、伊代の前では年相応の男の子になるのよね〜」

「ええええええ!?!?!」

「うっせーな……余計なこと言うなよ……。俺だって、全然会ってねーし……」

……あれ?
これってもしかして、シスコンってやつじゃない??

「ねぇ、どっちが上なの?」

「……は?」

「葵兄と伊代さん。どっちが先に生まれたの?」

「僕、だけど?」

「そうなんだ!」

そこでお母さんがにっこり笑って言った。

「1秒くらいしか違わないけどね。一応、伊代が先なのよ」

「チッ……」

こわっ!
っていうか——

「「双子ってことー!!??」」