10人家族になりました!

ー 詩 side ー

「……ふわぁ〜あ……」

まだまぶたが重たいまま、私はふらふらとベッドを出た。
昨日は、なんだかんだで寝るのが遅くなってしまった。
初めての「家族会議」は盛り上がったし、お姉ちゃんたちは遅くまで話してたし、私もなんだか眠れなくて……。

リビングからは、誰かの話し声と、フライパンの音が聞こえる。

「おはよ〜……」

ドアを開けると、そこには――

「はい、目玉焼き完成〜! いっくん、熱いから気をつけてね〜!」

朱莉さんが台所で朝ごはんを作っていた。
エプロン姿が、なんだか“本当のお母さん”みたいで、ちょっとドキッとする。

「あ、詩ちゃん、おはよう!」

「おはようございます……」
ちょっとだけ照れながら挨拶を返す。

「詩〜! テーブルこっち片付けといて〜」
柚姉の声がキッチンの向こうから飛んでくる。もうメイクまで終わってる! さすが。

「りーくん、もう着替えた? ご飯できるよ〜!」

「はいはい……」と、のそのそと理人くんが現れる。
……パジャマのままだけど、そのままソファに倒れこんだ。

「ちょ、布団じゃないから! そこ!」
柚姉がツッコミを入れる。

「ごめん、寝不足で……」

「寝不足仲間〜!」と私が叫ぶと、柚姉とハイタッチ。
理人くんが苦笑いしながら起き上がる。

ー 怜 side ー

「おはよう。詩、柚、手伝うわ」

私も静かにリビングへ降りると、すでに朱莉さんと柚がキッチンを行ったり来たりしていた。

「怜さん、助かるわ。今日、結斗くんが転校先の初めての保育園の日なの。他の兄弟も今日が初登校だしバタバタで……」

「大丈夫です。詩、テーブルセッティングお願い」

「ラジャー!」

そのとき、トコトコトコッと走ってくる足音。

「おはよ〜っ!!」

依が元気よくリビングに駆け込んでくると、同時にいっくんも「おはー!!」って叫んでハイタッチ。
もうすっかり仲良しになっている。子どもの適応力、すごすぎる。

ー 朱莉 side ー

昨日まで“他人”だったはずの子たちが、笑いながら朝ごはんを食べている。
この風景を、私は――ずっと夢に見ていたのかもしれない。

まだぎこちなさはあるけど、それでも、
昨日より今日、そして今日より明日。
ゆっくりでも、少しずつ“家族”になっていけたら、それでいい。

ふと見ると、怜さんと理人が並んで紅茶を飲んでいた。
会話は少ないけど、落ち着いた空気が流れていて――

……このふたり、似ているかも。

「さて、今日も忙しくなりそうね」