「でも、槙田ちゃんは、先輩のことが泣いちゃうくらい好きなんだもんね。だから俺は身を引くよ」
「……え?」
グラスの中の烏龍茶をストローで一気に流し込んだ大西くんは、ふーっと息を吐いて苦笑いをした。
「さっき、待ち合わせの時に泣いてたのは、先輩のことで、だよね?」
「まあ、そう、だけど……」
「俺が映画になんて誘っちゃったから、先輩に俺とのことを勘違いされたとかだったら申し訳ないなって思ってて」
「え、いや!それは違うよ」
慌てて否定するけど、大西くんの表情は晴れない。
「俺は今日、槙田ちゃんとこうして思い出ができただけで嬉しいから。槙田ちゃんの初恋が叶うように願ってるよ」
「……っ!」
にこりと、爽やかに笑う目の前の大西くんは、みんなが大好きな大西くんの笑顔だ。
だけど、その笑顔が今、私に向けられていることに、少しだけ寂しいと思ってしまった。
だって、私はこの数時間で大西くんの本当の笑顔を知ってしまったのに、これじゃあ大西くんの表面しか知らなかった昨日までの関係に戻ってしまった気がしたから。
