幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

何かにつけて大人は、一挙手一投足にまで明確な理由を求めてくる。そもそも答えがない場合だってあるはずなのに。


「この絵、本当は何ですか?」

「構想中。まだ途中だから」


私達が曖昧に答えると突っ込むくせに、自分達は有耶無耶に濁す。大人の典型だ。


結局は一糸先生も他の大人と同じ。分かってはいたものの、改めて突きつけられたせいか、ついため息が漏れてしまった。


さっさと帰りたい。でもそうできないのは、見上げた先生の黒髪がまだ湿っているから。視線を落とすと、先生のジャージを着た自分が目に入るから。


これ以上の借りはゴメンなので、先生の指示を仰ぎながらダンボールの組み立てに専念する。


3つ目のダンボールを手にした時、この部屋でもまた、大きな音を立ててドアが開いた。


「独りは寂しいから来ちゃった!」

「伝票は?」

「持ってきた!」


自慢気に紙の束を掲げた晴士という人が、入り口横にあった丸椅子を私達の側まで運んでくる。どうやらテーブル代わりらしい。


「ねーねー、イットの本性を知ってどう思った?」


体を寄せながら囁かれた声は、明らかに先生を警戒していた。『イット』というのも、たぶん先生のことだろうけど……。


答えを求めて当人へ視線を流すと、さっきまで黙々と梱包材を詰めていたはずの先生は、再び部屋中を忙しなく動き回っていた。


――――あの人をどう思うか。


ぼんやりと頭に浮かんだのは、学校の廊下で生徒に囲まれている姿だった。そのスマートな佇まいが、夜の公園で気だるげにタバコを吸うモッさんへと切り替わる。