幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

いきなりの訪問客に茫然としながらも、先生の顔色をうかがう。目が据わっている表情から察するに、どうやら彼は、先生にとっても想定外なお客様らしい。


テンション高々に入って来たのは、紺色のスーツに身を包み、ウルフヘアをいちょう色に染めた若い男性だった。先生の凛々しさとは対照的な、その陽気さが残念に思えるほどの華やかさを纏っているひと。


ていうか、この人――――だれ?


「お前、遅れるんじゃなかったの」

「えーっと。……え? 彼女?」


いきなり現れた男性はピタリと足を止め、先生と私を交互に見た。


「つかもっと静かに入ってこいよ。ドア壊れたら弁償だからな」

「ちょっとイット! 彼女出来たとか聞いてないんだけど?」


――――イット?


「出来ても報告しないし、こいつは生徒」

「生徒に手ぇ出すくらいなら合コンに参加してよ!」

「無理、忙しい」


くっきりとした二重瞼の上に細く整えられた眉。筋が通った小さな鼻、シャープな輪郭。先生と大差ないスタイルの良さ。――外見的には先生と同等だが、中身は180度違うらしい。


「え、ちょっと待って。生徒連れ込んで何してんの。“一糸春”はどこいったのさ?」

「こいつには本性バレてるから。今は個人面談中」

「……バレた? てか、個人面談って響きがヤラシイんだけど」


相関図すら理解できていない私を間に置いたまま、温度差のある応酬は途切れることなく続いていく。

一方は仁王立ちで果敢に攻め、もう一方はソファからふてぶてしく応戦し、もう訳がわからない。


「それより晴士、いま何時?」

「えっとねー……19時12分」