幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

「じゃあ私も。一糸先生が晴士さんに言えないことがあるときは、私が共有してやれる存在になりますね」

「さっきまで泣いてた奴が偉そうに」


呆れたように力なく笑う一糸先生は、やっぱり大人だ。

人を諭すなら、まずは自分の発言にちゃんと責任を持たなきゃ、でしょ。


「残念ながら、これは一糸先生から学んだことです。貰ったものを返すなら、共有してやる存在より、共有し合える存在。ですよね?」


自信満々に言っておきながら、一糸先生と目が合うと急に恥ずかしくなり、置きっぱなしだったカフェオレを手早く開けた。


「……ふぅ。お前、格好良いな」


そう言うのが先か、一糸先生の左手が伸びてきて、ふわりと頭に添えられた。


「あ、悪い。セクハラとか言うなよ」


一糸先生は両手を上げて釈明するが、問題はそこじゃない。


カッコイイという褒め言葉が女の子にとってどんな意味なのか、私にとってどういうものなのか、一糸先生はわかっているのだろうか?


キレイやカワイイは、化粧や服装や仕草でいくらでも補える。むしろ、挨拶感覚で『カワイイ』を使うくらいだ。

でも女子に対するカッコイイは、外見とは別に、内面から出た何かを褒めるときこそ使う――と、私は思っている。


完璧な美貌を持つカンナの隣に立つからこそ、私が目指しているものは、いつも“それ”だった。


「一糸先生って、ほんとにムカつくこと言いますよね」

「は? いまのは褒めたんだろうが」


――――ほらまた。


「あの解決策を提案するのに、こっちがどんだけ悩んだと思ってんだよ。いいご身分だな」

「そんなに面倒なら、言う前にもう一度よく考えるべきでしたね」