幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

心のどこかでわかってはいたものの、一糸先生が語る覆しようのない事実に、返す言葉が見つからない。


風化してしまうのが当然でも、いつまでも大切にしまっておくことが無理でも、“仕方ない”と切り捨てて欲しくなかった。


一糸先生にはせめて、解決策を探すフリ(●●)だけでもして欲しかった――。


湧き上がってくる失望感を、震える唇と一緒に噛み殺し、目を伏せる。


一糸先生が言う通り、私が大事にしたかったは、脳内フィルムにのみ記されているモノだ。だから私が変われば、写真のような鮮明な記憶も感情も、一緒に変わってしまう。キラキラと輝いていた日々に、影が差してしまう。

――――そんなことは分かってる。

一糸先生は正しい。間違っているのは私。以前学んだはずなのに、あらぬ期待をしてしまった私がバカなだけ。現実的な価値観を持つ大人に、何を求めたってムダなのに。


八つ当たりだと自覚しつつ、それでも、行き場のない思いを眼光に込める。


「だから人は、誰かと思い出を共有しておく、んだと……思う」


ぽつりぽつりと歯切れの悪い呟きに、敵意むき出しに細めていた目を見開いた。


「……え?」

「たぶん、記憶ってのは消えていくんじゃなくて、(かすみ)がかっていくだけなんだと思う」


立てた両膝に腕を架けて俯く一糸先生は、私がどんな表情をしていたのかも、向けられた視線の意味も当然知らない。それでも、もどかしくて居た堪れない私をなだめるように、一糸先生は優しい口調で言葉を紡ぐ。


「写真みたいな記憶ってのを誰かと共有しておけば、どれだけ時間が経っても、各々が霞がかったそれを持ち寄って補い合って、その時のままの状態に戻せるんじゃね? そうなれば、当時の感情も一緒に蘇るだろ」


一糸先生の邪魔をしたくなくて、声にならない感情を、息をも漏らさないように唇を固く結ぶ。