幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

動かない足を恨めしく思えば思うほど、認めたくない感情が湧いてくる。熱くなる目頭をなんとか堰き止めようと、一縷のプライドで必死に抗う。


楓の恋を心から祝福できない自分が許せない。ダイキラ――。


自己嫌悪に飲み込まれそうになった瞬間、伏せていた瞼を、ひやりと冷たいもので覆われた。


「まだ泣くな」


耳馴染みがいい低音ボイスに呼応して、硬直していた身体へ血が巡り、神経が通う。徐々に生暖かくなっていくこれは、たぶん、一糸先生の手だ。


脳が状況を理解すると、背後から抱くように回された右腕も、背中越しの一糸先生も、その存在がはっきりと伝わってくる。


「いいか、手を離したら屋上まで走れ。泣くのはその後だ」


――――そうだ。

こんな所で泣き崩れるわけにはいかない。


「イーゼルは置いてけよ」


黙って顎を引き、一糸先生の温もりが離れたのを合図に、イーゼルを手放して走り出す。瞼の奥に溜まっていた涙は流れてしまったが、構わず屋上へ向かった。




勢いよく鉄ドアを開き、閉塞感とは無縁の空間へ飛び込む。フェンスの側まで一直線に進むと、重い身体はへたり込み、そのまま寝転んだ。


さっきよりも空に近い場所へ来たはずなのに、目先に浮かぶ薄い雲は変わらず遠くて、私から離れるように流れていく。


頭の中を整理するために目を閉じると、零れた涙は横へと伝った。


肺が痛い。


顔が、熱い。