幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

カンナより小柄な彼女の上目遣いは、一切の嫌味がなく、その瞳もキラキラと輝いて見えた。


「いや、今日は友達の応援。それに楓とはもう終わってるから」

「え! すごくお似合いだったのに」


表情から察するに、これも嫌味ではないのだろう。だが今は、そんな話は聞きたくない。


「……正直言うと、アタシ前から楓くんが好きだったんです。2人が付き合ってた時から、ずっとです」


彼女の告白があまりにも唐突すぎて、一瞬、息が止まった。


「もう終わってるんなら、問題ないですよね?」


彼女の純真さを表したような瞳が、真っ直ぐにこちらを見つめる。

楓を好きになる子はこれまでに何人もいたが、堂々と立ち向かって来られたのは初めてだ。いまの私は、ダメだと言える立場ではないのに。


「あ、えっと――」


言葉に詰まってしまった瞬間、沈黙を埋めるかのようにスマホの受信音が鳴った。


【第1美術室】


心の中でメッセージを復唱すると、画面から視線を上げ、いつもの笑顔を作る。

大丈夫。そっけない5文字のおかげで、呼吸の仕方はもう分かる。


「私には関係ないことだし、許可もいらないでしょ。じゃあ、頑張ってね」


彼女の返事を待たずに背を向け、何事もなかったように歩き出す。そして部室棟の脇を曲がると、残りの道のりを全力で走った。


「はぁッ……はぁ……いとせんせぇ、おまたせしました」


美術室のドアを開けながら、まずは精一杯の挨拶をする。


「別に待ってないけど」