幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

翌朝。スマホのアラームが鳴ると、重い瞼をこすりながら最初にメールを確認した。念の為に手動で情報更新するが、新着はなし。


やはり報告は不要だったのだろうか。いや、一糸先生の性格を考えると、目を通すだけで返信はしない、というのがデフォルトの可能性もある。そもそも、見てくれているかも怪しい。


――――わからない。


せめてこれがSNSなら、既読マークが付くのに……。


悶々とした気持ちを抱えながら起き上がり、のそのそと身支度を始める。

休日だというのに制服に着替え、いつもの道をカンナと歩く。


「さて芙由さん、今の心境は?」

「……わかんない」

「だよね。萩原に会うってのに、清々しいです、とは言えないかー」

「あ、そっち?」


カンナの言葉で、一気に現実に引き戻された。


「そっち?って。芙由、しんどいなら無理しなくていいんだよ?」


しんどい事があるとすれば、目覚めた瞬間から今の今まで、一糸先生のことばかり考えていた自分の痛々しさだ。


「もし無理だと思ったら、悪いけど先に帰るね」

「がってんしょうチ! それがいいよ!」


久しぶりに聞くセリフに、ほっこりと心が和む。


大丈夫。不安どころか、他のことで悩む余裕すらある。きっと大丈夫――。


穏やかな雰囲気のまま体育館へ着くと、合同練習は既に開始されており、私達は真っ直ぐ2階へと登った。意外ではないが、体育館を囲うように造られているギャラリーの観客は、そのほとんどが女子だった。


「あっ、陽平達みっけ! あれだよね?」

「赤のユニフォームって言ってたし、たぶんあれだね」