幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

「ウチは行くよ。ここであるなら迷子にはなんないし!」

「……私も行こうと思ってる。避難所もあるしね」

「えっ? 避難所ってなに?」


キョトン、と目を丸くするカンナに微笑み返す。


「ひみつ」

「なにそれ気になるじゃん!」


カンナは唇を尖らせ、頬に空気を蓄えた。この百面相を見ていると、完全に回復したのだと安心する。


「まあでも、芙由は前に進もうとしてんだよね。……今日は赤飯だな」

「ごめん、あのパサパサあずき苦手」


楓のことを笑い交じりに話せるなんて、自分でもちょっとビックリだ。

私は、自ら望んでこの荷物を抱えている。それでも、この荷物の価値を理解してくれる人がいることで、前よりも心が軽い。


私達は教室へ着くなり、既に登校していた陽平と要へ、『明日、応援に行く』と笑顔で伝えた。


――残る課題はあと一つ。

今日を終える前に、自室のキャビネットにしまっておいた紙を一枚だけ取り出す。


【こんばんは、椎名です。明日は応援に行くことにしました。】


文章は完成したものの、私の手はそこで止まってしまった。


確認するほどでもない短文を読み返す。

果たしてこれは、一糸先生へ報告するべきことだろうか。手伝う気になったら連絡して、ということは、手伝えない場合の連絡は不要だろうか。


――――わ、わからない。


散々迷った挙げ句、急にこの自問自答がアホらしく思えてきて、送信ボタンに軽く触れてからベッドへ潜った。