私が笑ってみせると、一糸先生は小さなため息を吐き、タバコを咥えた。
「ふぅってさ、マジで楓って奴のこと好きだったんだな。人をここまで寛容にさせるとか、そんな恋愛してこなかったから、よくわかんねぇよ」
恋愛のカタチは人それぞれだろうけど――。
「これでも私、くだらない恋愛も、無駄な恋愛もしてないと自負してます」
「耳が痛いわ」
一糸先生が苦々しい表情で煙を吐く。堪らず笑い声を漏らすと、普段は端麗な顔が更に歪んだ。
「告白ひとつにしたって、ちゃんと覚えてるんですよ? 目があった瞬間、楓が恥ずかしそうに視線を逸した瞬間、それから、真剣な顔で見つめ返された瞬間。全部が私の宝物です」
「そんな細かく思い出話されても、何も面白くねぇよ」
気怠そうに空を仰いだ我が担任は、自らが生み出す白煙で遊びはじめた。
それでも私は、むしろ一語一句丁寧に言葉を紡ぐ。
「思い出ですけど、思い出じゃないです。告白した、手をつないだ、キスをした――そんな箇条書きな出来事じゃなくて、私にとっては写真みたいな記憶です」
「…………」
「相手の仕草とか、周りの風景とか。思い出そうとしなくても、その一瞬一瞬が鮮明に残ってます」
私が真剣に語ろうと、一糸先生から反応が返ってくることはない。
ただ、興味がない素振りを見せながらも、しっかりと耳を傾けてくれていると分かっていた。この人になら、私の内にある思いを話してもいいと、確信めいたものがあった。
……なぜなのかは、説明できないけど。
「そういえば、お前って人気あるんだな。王子の一件で結構騒ぎになってたぞ」
「日頃からキャーキャー騒がれてる人がよく言いますね」
鼻で笑うと、ようやく一糸先生はこちらを見た。
「ふぅってさ、マジで楓って奴のこと好きだったんだな。人をここまで寛容にさせるとか、そんな恋愛してこなかったから、よくわかんねぇよ」
恋愛のカタチは人それぞれだろうけど――。
「これでも私、くだらない恋愛も、無駄な恋愛もしてないと自負してます」
「耳が痛いわ」
一糸先生が苦々しい表情で煙を吐く。堪らず笑い声を漏らすと、普段は端麗な顔が更に歪んだ。
「告白ひとつにしたって、ちゃんと覚えてるんですよ? 目があった瞬間、楓が恥ずかしそうに視線を逸した瞬間、それから、真剣な顔で見つめ返された瞬間。全部が私の宝物です」
「そんな細かく思い出話されても、何も面白くねぇよ」
気怠そうに空を仰いだ我が担任は、自らが生み出す白煙で遊びはじめた。
それでも私は、むしろ一語一句丁寧に言葉を紡ぐ。
「思い出ですけど、思い出じゃないです。告白した、手をつないだ、キスをした――そんな箇条書きな出来事じゃなくて、私にとっては写真みたいな記憶です」
「…………」
「相手の仕草とか、周りの風景とか。思い出そうとしなくても、その一瞬一瞬が鮮明に残ってます」
私が真剣に語ろうと、一糸先生から反応が返ってくることはない。
ただ、興味がない素振りを見せながらも、しっかりと耳を傾けてくれていると分かっていた。この人になら、私の内にある思いを話してもいいと、確信めいたものがあった。
……なぜなのかは、説明できないけど。
「そういえば、お前って人気あるんだな。王子の一件で結構騒ぎになってたぞ」
「日頃からキャーキャー騒がれてる人がよく言いますね」
鼻で笑うと、ようやく一糸先生はこちらを見た。
