幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

「バスケの応援に行ったとき、女の子達の歓声が大嫌いでした。楓くーん!ってハート撒き散らして、ホント最悪」


一糸先生はあぐらの上に頬杖をつき、缶コーヒーで口を塞ぐ。相槌なんてないので、私も勝手に話を続ける。


「でもキツイときの応援って、力になるんだろうなぁって。彼女達の声援も楓の力になってるんだって思うと、肩組んで一緒に応援したくなるくらい、尊いなって」

「んで、ライバルと肩組んで応援したんだ?」


バカバカしい返しに噛みつこうとしたが、喉元まできていた言葉は飲み込んだ。


頬杖の上にあった退屈そうな顔は、それでも、しっかりとこちらを向いていた。


「……自分にとってはキライな相手で、でも好きな人にとっては必要な存在で。それを受け入れるのは、私には簡単なことじゃなかったんです」


昔の自分と、私の前で正座していた裏ボスが重なる。どれほどの葛藤があるのか、わかるからこそウルッと笑えてくる。


「裏ボス達がやった事は許せません。でも、裏ボスの想いの深さを知れたから、責めなくて良かったとは思ってます」


これ以上気持ちが昂ぶらないように、私は一度目を閉じた。


「言いたいことはなんとなく伝わった。でもさ、何度かこの話題になったけど、事実を隠してきたのは何で? まだ庇うほどの共感要素なんてなかっただろ?」


一糸先生の問いに、ゆっくりと瞼をあげる。


「一糸先生が私の立場ならどうします? くだらない理由で、って思いますか?」


誰かを好きって気持ちは、私にとって純粋なもの。行動はそれに付随しているだけ。全てを引っ括めて責めるなんて、私はしたくない。


「好きだからって、何やってもいいわけじゃないだろ」

「ホンキで好きなら尚更、私達にした事は嫌でも黒歴史としてついて回ります。反省も後悔も、先生の説教なんていらないです。だからさっきの話は忘れてください。この件に関しては、私が犯人ということで」