幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

「昼休みはここで榎本さんと過ごしてるの?」

「そう」

「気持ちいいし、いい場所ね」


葉の香りを乗せた乾いた風。それに似た、穏やかな裏ボスの声。彼女は言葉通り、(うら)らかな表情で辺りを見回していた。


「……内緒で連れてきてるし、今後は進入禁止でよろしくね。ここはカンナのお兄ちゃんから譲り受けた場所でもあるから」


気に入ったと言わんばかりの裏ボスを、つい牽制してしまった。


分かっている、ここを占領していい権利なんて持っていない。でも、私の勝手で侵されるわけにもいかない。

この旧校舎の屋上は、私とカンナの憩いの場所。……ついでに、一糸先生が素に戻れる場所だから。


「で、2人で話したいことってなに?」


フェンスを背に腰を下ろすと、裏ボスも真正面に座り込む。コンクリートの上で迷わず正座する姿に、日頃の高慢さの裏側を見た気がした。


「単刀直入に訊かせて貰うけど、宿泊研修でタバコの件を揉み消したのは椎名さんよね」

「……なんの話?」


真っ直ぐに私を見据える黒々とした瞳。敵意むき出しな口調。

半年前の悪事を自ら蒸し返して、裏ボスは一体何が言いたいのだろうか。


「荷物検査が行われるはずだったのに、春先生はやらなかった。榎本さんの態度も、何も知らないみたいにいつもどおりだったし」

「…………」

「榎本さんの鞄からタバコを抜き取って、それでどうしたの? 検査がなかったのは何で? あなたが関わってないとは思えないんだけど」


表情も雰囲気も、裏ボスから放たれる全てが、私を『気に食わない』と訴えている。だからといって、こちらも臆するわけにはいかない。


――真犯人の私が目指したのは、なにもなかった(●●●●●●●)、だ。