幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

陽平の言葉を掻い摘んで、次から次へと悩みの種が湧いてくる。懸念の一つに視線を移すと、裏ボスとバッチリ目が合った。


「ねぇねぇ! バスケ部の練習試合って今週の土曜?」


私の沈黙を埋めるように、裏ボスの側近の一人、“キノハラさん”が飛び込んでくる。彼女のきの(●●)こヘアも、わざわざ私にまで笑顔で首を傾げる()黒さも、宿泊研修からなんら変わっていない。


「うん。よかったら見に来てよ、オレと要も出る予定だから」

「絶対行くっ! 時間とかハッキリしたら教えてね」

「りょーかい。芙由もカンナ誘って来いよ? 懐かしいヤツにも会えるしさ」


にこやかに告げられた陽平の一言で、瞬く間に鼓動が早くなった。


「懐かしい人って、共通の友達?」

「友達っつーか、萩原楓ってヤツが芙由達と同中なんだよ。高校に入ってから2番になったって話だから、久々に試合できるの楽しみでさ」


萩原楓という響きに、心臓が加減なしに跳ね回る。何かしら吐き出さなければ、窒息しそうだった。


「2番って、シューティングガードだよね。中学じゃポイントガードだったのに」

「芙由詳しいね。萩原は元々オールラウンダーだし、現任メンバーとの調整とかで変わったんじゃないかな」


ゲームメイクを任されるポイントガードから、点取り屋と呼ばれるシューティングガードへのスイッチ。それを聞くだけで、楓が必死に練習している姿を想像できる。

きっと、身長だって更に伸びているに違いない。


楓がどう変わったのか見たい。


……でも、会いたくない。


「どうした? あ、芙由って萩原と仲良いわけじゃないんだっけ?」


気づけば、声をかけた陽平だけでなく、例の3人組も怪訝な表情をしていた。


「んー。カンナの体調次第だと思うけど、行けそうだったら連絡するから」