幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

一糸先生のおかげで背筋が伸びたはいいが、校内を歩いていても、教室へ戻っても、やはり好奇の目に晒される。こうなったら、成弥くんが早く本物の彼女を作ってくれるように願うばかりだ。


「なぁ芙由、3年の榎本先輩と付き合ってるってマジ?」


雑音を薙ぎ払うような豪直球が飛んできて、スマホから顔を上げる。

隣の空席に腰を下ろした陽平は、ニカッと白い歯をみせた。


ああ……。普通に声をかけてくれて嬉しいけど、これはこれで面倒かもしれない。


「えっとね、あれは――」


教室の片隅にいた裏ボス達を横目に捉えたとき、わかりやすく周囲が静まった。


今は他のことに気を取られている場合じゃない。たぶんここが、誤解を解く唯一のチャンスだ。


「今日カンナが休みじゃん。だから、提出物を届けに来た成弥くんと、成り行きで登校したって感じ。付き合ってるとか誰が言い出したんだろうねぇ」


さり気なさを大事に、でもハッキリと声が通るように返事をする。


「なーんだっ! 付き合ってるってデマかよー!」


大げさに机にうなだれた陽平は、顔をこちらに向け、薄い唇で三日月を描いた。


思わず私がたじろぐほどの大声だった。きっと教室中に聞こえている。


「あ、ありがとう」


小さな声でお礼を伝えると、陽平はいつもどおりの屈託のない顔で笑った。私から見れば、成弥くんよりも遥かに王子様だ。


「なぁ芙由、今週末ウチの学校で合同練習試合があるんだけど、見に来ない? カンナの体調が戻ったら一緒に!」


――バスケの合同練習試合。

――カンナと一緒に。