幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

――――ああ、ムカつく。


「別にいいんじゃね、分かってて欲しい奴がわかってくれてるなら。噂も真実も、信じたい奴しか信じねぇよ」


一糸先生は時折、回復魔法のようなセリフを吐く。抵抗なく入ってきて、()みわたり、前を向くきっかけをくれる。


「……こんな事でオドオドしてるの、ガキだなって思いますか?」

「そうだな。噂なんかに動じず、ドンと構えてる方が格好良いよな」


タバコを消して座り込んだ一糸先生の横顔は、なぜか微笑んでいるように見えた。


「じゃあ、カッコよくいることにします」

「最近素直だな」

「余計なお世話です」


私の中で淀んでいた何かが一掃されると、空いた空間に食欲が湧いてくる。

買ってきたサンドイッチにかじりつき、カフェラテへ手を伸ばす最中に、チラリと横をうかがう。


『ふぅは意外と一途だもんな』


バーガーを頬張っているこの人は、あれがどれほどの褒め言葉だったか分かっているのだろうか――。




購買部のポリ袋にゴミを詰めると、食後の一服中だった一糸先生に声をかける。


「それじゃ、私は先に戻りますね」

「早ぇな」

「ずっとここに居たら、なんか隠れてるみたいだし。澄ました態度で教室に居座ってやります」


キョトンと見返す切れ長な目を、風になびいたウェーブヘアが覆う。

耳のふちへ髪を戻した一糸先生は、白い煙を吐くだけで、何も言わない。でも、『やってみろ』と言いたげに口の端があがったので、私も同じ表情で軽く頭を下げた。