幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

「で、カンナはどうしたの?」


成弥くんと並んで歩き出すと、私は軽く袖を捲りながら、さっそく本題を切り出した。


「カンナは熱出して寝込んでる。バカでも風邪ひくらしいから、芙由も気をつけろよ」

「ご心配どーも」

「あ、このノート、今日提出だからって遺言」

「提出物で稼がないとカンナは成績ヤバいからね。私と違って!」


遠回しに反論しつつ、ノートを受け取る。こちらを見下ろしていた成弥くんの視線は、小馬鹿にしたような笑みを残して進行方向へ戻った。


2人だけで話すのは久しぶりだが、流れる空気は昔から変わらない。

通行人を避けて瞬間的に肩を抱かれようと、私にとっては、王子様になりえない。


「そういえば、ミスターコン残念だったね。3連覇したかったんでしょ?」


何気なく口にした文化祭の話題に、成弥くんの足がピタリと止まった。


「あれさ、ありえなくね?」

「ある意味伝説だよ。てか歩いて、本当に遅刻するよ」

「……そっか。まあ、伝説ならいいや」


数回頷いた成弥くんが、顔の中央に凝縮されていた不満を解く。


「伝説かぁ。でも、中止より3連覇の方がカッコイイよな」


――――し、しつこい。


今年の文化祭でミスター・ミスコンテストが開催されなかったのは、2年連続で圧倒的な得票数を集めた誰かさんのせいだ。それでも成弥くんは惜しいと嘆く。

『キング』やら『3連覇』やらの称号に、一体どんな価値があるというのか。


「あのさ、ミスコンが隔年に変更されたのは、開催しなくても結果が分かり切ってたからでしょ」

「じゃあ事実上は俺が3連覇?」

「だね。おめでとう」