幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

晴士の言い回しに、だよな、と無言の相槌をうつ。応えを待つ間に2本目のタバコを咥えたとき、スマホの奥で一際大きな吐息が聞こえた。


『イットに絞って話すなら、お前がお前らしくあることだよ。イットらしくいるために俺が必要なら嬉しいし、必要ない場合はそれでいい。お前が荒れてた時期もずっとそう思ってたけど? これでいい?』


不機嫌な声のせいで込み上げてきた笑いを、紫煙に混ぜて吐き出す。


晴士に『お前』と呼ばれたのはいつぶりだろうか。


親の仕事の関係で、晴士とは幼少から互いの家を行き来する仲だった。引っ越しを期に中学の途中から同じ学区になったが、クラスが被ったのは高校の2年間だけ。白と黒、もしくは明と暗と対照的に比喩され、なぜ仲がいいのか、よく疑問に思われていた。


「親友って何なんだろうな」

『んー。センセーってのも大変そうだね』


この腐れ縁は、晴士が手綱を握っているようなもんだ。だからこそ唯一無二と思える。でもアイツらが望んでいる“親友”は、相思相愛の類だろう。


――――しんゆう、か。


「なぁ、今日の夜ひま? 焼き鳥屋行かね?」

『18時には仕事終わるから、そのあとアトリエ向かうよ』

「悪いな」

『いいけど、キモチワルイ話は今回限りにしてよね。じゃまた後で!』


電話を切ると、改めて自分の立場を顧みる。


初めて椎名芙由に会ったとき、どこか自分と近いものを感じた。そして榎本カンナが今日、いつかの晴士と同じように笑った。それならば、教師という建前は関係なしに、首を突っ込む意味はあるのかもしれない――。




暗躍した夜が明けて、計画当日。2人の和解を見届けたものの、同時に、自分の愚かさを突きつけられてフェンスにもたれた。