幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

「よかった、春先生いた……」


吸い殻を携帯灰皿へ押し込んだ直後、ゆっくりとドアを開けて現れたのは榎本カンナだった。


似つかわしくない神妙な面持ち、覇気のない声。それらが意味するものは、なんとなく察しがついた。


「どうしました?」

「……芙由と仲直りするにはどうしたらいいと思う?」

「喧嘩したんですか?」

「うん。ウチが悪いんだけどね」


対面していた榎本カンナが、らしくない笑顔を残して視線を下げる。


「……中学のときね、嫌がらせされてんのを誰にも言えなくてさ。でも気づいた芙由がやめろって、堂々と庇ってくれたんだ。だからウチも、芙由がしんどいときは絶対助けたい、けど……バカすぎて上手くできなかった」


再びこちらを見上げた榎本カンナは、寂しそうに笑った。


生徒からの相談なんて、適当にそれらしいことを返しておけばいい。仲介役なんて柄じゃない。

――でも、この笑顔にそっくりな(ツラ)が、脳裏を過ってしまった。


「では明日のお昼、この屋上に集合しましょうか。椎名さんは責任持って連れてきますよ」


榎本カンナと別れると、さっそく目当ての人物に電話をかける。

無機質なコール音は、4回目が鳴り終える前に途切れた。


「なあ、親友に求めることってなに?」

『……は? いきなりなんなの?』


学生時代、晴士は事ある毎にあの笑い方をした。当時は気づかないフリをしていたが、助言を求めるとしたら、コイツ以外いない。


『あのさ、俺にとってのそういうポジ(●●●●●●)ってイットだし、本人に言うの小っ恥ずかしいんだけど』