幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

「どしたのイット、すっごい険しい顔してるけど」

「散々笑っといてよく言うな」


晴士をひと睨みしてから、再びビールで喉を潤す。


――晴士との関係は、言い表すなら“親友”なのだろう。だがアイツ等のように口論したところで、どうにかしようとまでは思わない。もし結果的に絶縁状態になっても、仕方ないと割り切れる。要はただの腐れ縁だ。


何でも話せるが、お互いに、自分から何でも話すわけじゃない。タイミングだってある。


「珍しくハイペースだね」

「……まあな」


首を傾げる晴士に言われて初めて、手にしていたジョッキが空なことに気づいた。


おかわりを待つ間に、タバコへ火を点ける。


「なあ晴士、椎名芙由と連絡とってる?」

「とってないよ。イット本当に渡してくれた?」

「ああ」


ちゃんと渡した。晴士の連絡先も、自分のも。


あくまでもホットラインだったし、とっくに処分した可能性もある。まあ、手元に残していたところで、そう易易と他人に相談するタイプでもないだろうけど。……相手が“信用できない人”なら尚更、か。


なんにせよ、いち教師ができることはたかが知れている。わざわざ面倒事に首を突っ込む必要もない。



――そう自己解決したはずなのに、数日経っても、旧校舎で一服しながら考えるのは椎名芙由のことだった。




屋上(ここ)へ来る途中で渡されたピンクの封筒を一瞥し、息が続く限り紫煙を吐き切る。

アイツにもこれくらいの可愛らしさがあれば、どれだけ扱いやすかったことか。