「楓がバスケ頑張ってるの、ずっと見てきた……。9年、見てきたんだよ」
気づけば堪えていたはずの涙は溢れ出していて、声の震えを抑えるには、ボリュームを上げるしかなかった。
「私が好きになったのは、バスケ馬鹿の楓だもん! 私がっ……私が楓の障害になるのだけは、イヤだった」
顔を上げると、目の前にあった色素の薄い瞳からも涙が零れた。
ほらね、やっぱりカンナは泣く。
だから嫌だったんだ。だから、隠しておきたかったのに。
「……ごめん、内緒にしてて。カンナに相談したら、私の決心が揺らぐ気がしてた。だって、カンナは私のことを一番に考えてくれるでしょ?」
唇をきゅっと結んだままのカンナに、しっかりと微笑む。
「別れたのは、楓への気持ちの証明だと思ってる。つらくても、大切な思い出なんだよ」
先生達の言葉を無視できなかったのは、いつも心のどこかで、楓に釣り合っているか不安があったからだ。ただ私は、先生達からどう見えていようと、楓の努力が報われるように誰よりも願ってた。
「アホだね芙由は。その話聞いてたら、別れるのは間違ってるって言うよ? でもさ……本当に好きだからなんだって、ウチはわかるよ」
怒っているような口調だったカンナが笑う。その笑顔が妙に心地よくて、でも顔を見合わせて笑い返すのは照れくさくて、髪を耳に掛ける仕草で誤魔化した。
文化祭準備に追われている生徒達の声に紛れて、2人して鼻をすする。
熱っぽい風が横切り、濡れた頬を乾かしていく。
――もし私が品行方正な優等生だったら、と後悔せずに済んだのは、いまの私の側にはカンナがいるからだ。お互いの髪を染めて、ピアスを開けて、授業をサボって怒られて。カンナと過ごしてきた時間は、もしも話でも失いたくなかった。
気づけば堪えていたはずの涙は溢れ出していて、声の震えを抑えるには、ボリュームを上げるしかなかった。
「私が好きになったのは、バスケ馬鹿の楓だもん! 私がっ……私が楓の障害になるのだけは、イヤだった」
顔を上げると、目の前にあった色素の薄い瞳からも涙が零れた。
ほらね、やっぱりカンナは泣く。
だから嫌だったんだ。だから、隠しておきたかったのに。
「……ごめん、内緒にしてて。カンナに相談したら、私の決心が揺らぐ気がしてた。だって、カンナは私のことを一番に考えてくれるでしょ?」
唇をきゅっと結んだままのカンナに、しっかりと微笑む。
「別れたのは、楓への気持ちの証明だと思ってる。つらくても、大切な思い出なんだよ」
先生達の言葉を無視できなかったのは、いつも心のどこかで、楓に釣り合っているか不安があったからだ。ただ私は、先生達からどう見えていようと、楓の努力が報われるように誰よりも願ってた。
「アホだね芙由は。その話聞いてたら、別れるのは間違ってるって言うよ? でもさ……本当に好きだからなんだって、ウチはわかるよ」
怒っているような口調だったカンナが笑う。その笑顔が妙に心地よくて、でも顔を見合わせて笑い返すのは照れくさくて、髪を耳に掛ける仕草で誤魔化した。
文化祭準備に追われている生徒達の声に紛れて、2人して鼻をすする。
熱っぽい風が横切り、濡れた頬を乾かしていく。
――もし私が品行方正な優等生だったら、と後悔せずに済んだのは、いまの私の側にはカンナがいるからだ。お互いの髪を染めて、ピアスを開けて、授業をサボって怒られて。カンナと過ごしてきた時間は、もしも話でも失いたくなかった。
