幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

全てを理解すると、あまりの茶番に笑いすら込み上げてくる。


いくら生徒(カンナ)から相談されたとはいっても、さすがにこれは介入し過ぎだろう。


騙された上に、こんなお膳立てまでされて――。モッさんには『ガキ』だと言われるだろうけど、この状況に素直に順応できるほど、私は大人じゃない。


感情に従って踵を返すが、悠々とタバコを吸っている大人がドアの前を陣取る。


「どいてくれませんか?」

「無理」


それはこっちのセリフだ。


「自分が何をしたか分かってます? 私はこんなこと頼んでません」

「わかってないのはお前。人が勇気振り絞ってんだぞ。一方的に背を向けるとか、そういう格好悪いことはすんな」


ただ真っ直ぐに、私を捕らえて離さない力強い眼差し。その瞳に頭の中まで見透かされている気がして、言葉が続かない。

一糸先生ともモッさんとも違う人。これも、一糸春が作り出したキャラの一つなのだろうか。


先生に腕を引かれて、カンナの前へ立つ。ピクリとも笑わないカンナは、目が合った瞬間、長いまつ毛を伏せながら顔を俯けた。


脳内で榎本カンナの“しんゆう”が告げる。

――――居心地が悪いのは私だけじゃない。


脳内で世話焼きな担任が諭す。

『貰った分は返したい、って思えるかどうかじゃないの?』


可能なら、今すぐにでも帰りたい。先生の力を借りてしまったこの現状も癪だ。でももっと厄介なのは、カンナと喧嘩した日に先生と交わした会話が、ずっと頭から離れないこと。


――そしてなにより、格好悪い“椎名芙由”は、私が許せない。


「カンナ、とりあえず座って話そう」