幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

私が教卓を挟んで立つと、一糸先生は単語と単語の間に矢印を書いていく。


「新しい友が親しい友になり、信じ合える友となって、心通わせ合う友となる。そして真の友になってゆく」

「…………」

「前に榎本が言ってたよな、2人は“しんゆう”だって。お前達はどれだと思う?」


そんな事をいきなり訊かれてもわからない。私の中の“しんゆう”は、たった一つしかなかった。


「じゃあ逆に、お前の理想は?」


私の回答を待たずして、一糸先生はまた黒板に文字を連ねていく。


新たに書き足されたのは、【深友、進友、芯友】の3つだった。


「深い部分で繋がっている深友か、一緒に突き進んでいける進友か、決して揺らぐことのない芯友か」

「私は……」


白いチョークで綴られたいくつもの“しんゆう”を眺めていると、変幻自在に変わっていくカンナの姿が次々と浮んでくる。

大きく口を開けて笑う顔や、上目遣いのふざけた顔。そして強情な、真剣な眼差し――。


「ただの言葉遊びだけど、でも、こういうの()くない?」


チョークを戻した一糸先生が、力なく指先をはたく。


「自由に形を変化させて、一番しっくりくるものに創り変えることができる。そういう柔軟さってさ、優しい嘘に似てる」


優しい嘘……。私はカンナに隠し事をしたまま、どんな関係を望めるのだろうか。カンナは、私とどんな関係を築きたいだろうか。


「……まあいいや。ちょっと休憩したいから屋上行くけど、どうする?」


こちらへ向き直った一糸先生は、きっと全生徒が見知っている穏やかな雰囲気を醸し出していた。