幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

私がカフェオレの清涼感を楽しんでいる間に、モッさんはメガネをコンタクトに変え、髪を整えてから部屋へ戻ってきた。服装は変わっていない。


「一糸先生もそんなラフな格好で行くんですか?」

「休みだし、文化祭の準備に顔出すときもこんなもんだけど? あ、椎名さんは参加してないので知りませんよね」


モッさんの片鱗を残して、一糸先生が微笑む。

いっそのこと、学校中に本性がバレてしまえばいいのに。


喫煙姿も様になる一糸先生の一服が終わると、私達は大量のダンボールを車に積んで学校へ向かった。4階にある美術準備室と駐車場を何往復もしたのち、全ての荷物を運び入れるとすぐに、また荷解きが始まる。


「誰にも見られなくて良かったな」

「どういう意味ですか」


薄ら笑う顔を一瞥し、ダンボールの口に貼られたガムテープを勢いよく剥がす。


――――今すぐ本性バレろ!


心の声を悟られないように背を向け、次から次へとダンボールの封を開けていく。

ふと集中が切れたときには辺りは静かになっており、一糸先生の姿もなかった。


「全部のダンボール開けましたけどー」

「ああ、こっち」


聞こえてきた返事を辿り、扉続きになっている第1美術室を覗く。

一糸先生は誰もいない教室でひとり、黒板に向かっていた。


作業を押し付けて何をやっているのか。そう突っ込むつもりで肩を落としたものの、黒板の中央に記された文字を見て、嫌味はすべて飲み込んだ。


――新友、親友、信友、心友、真友。


「これ知ってる?」

「いえ」

「前にネットで見た。『新友は親友となり、信友になって心友となる。そして真友になっていく』ってやつ」