幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

身動きがとれない不甲斐なさを悟られたくなくて、私は何食わぬ顔で目の前のカフェオレに手を伸ばした。


「まあいいや。準備に参加してないなら昼間は暇だろ、明日ちょっと手伝って」

「は?」

「一糸先生の手伝いをしてくれたら、お咎めナシ。どう?」


そもそも夏休み中の準備は任意参加となっている。でも、正式に不参加が許可されるのなら、悪い話じゃない。


「……じゃあ、それで」

「アトリエの場所分かる?」

「大丈夫です。ほとんど一本道でしたから」

「んじゃ明日9時に。コーヒーありがと」


それだけ言うと、一糸先生はタバコを吸う間もなく、缶コーヒーを手に公園から去って行った。




翌日、私は通常通りの時間に起きて身支度を始めた。とはいっても、文化祭の準備に行っていないだけで、起きる時間は大して変わらないけど。


問題は、服装をどうするか。


メイクとヘアセットを終えると、壁に掛けてある制服を見つめる。無難ではあるけど、“手伝い”にはたぶん向かない。


散々迷った挙げ句、動きやすさを重視したラフなパンツスタイルで家を出る。道中で2台の自販機を横切ったが、昨日の今日なので、差し入れはなし。


アトリエへ着くと、不用心にも開けっ放しな玄関を横目に、とりあえず呼び鈴を押した。


『はい』

「おはようございます、椎名です」

『うん見えてる。入って来るついでに、車のトランクにあるダンボールを持てるだけ持って来て。鍵は開いてるから』

「わかりました」