幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

カウンターに片肘を付いた一糸先生が、首を傾げるようにこちらを見る。


「部活組も講習組も、休みの日は来てるぞ」

「ああ! 文化祭の準備、夏休み中からやってたよねー。懐かしいなぁ」


このひりつく空気を晴士さんは感じないのか。


「文化祭って俺も行けるよね?」

「晴士うるさい」

「……私忙しいので、注文がないなら失礼します」

「待て。バイト何時まで?」


これは、私が負い目を感じているせいかもしれない。だが明らかに、今日の一糸先生には妙な威圧感があった。


「21時であがりです」

「あと5分くらいか。じゃあ、バイト終わったら例の公園で。すぐ済むから」

「え、逢い引き? 俺も行っていい?」

「だめ」


冷めた口ぶりで席を立った一糸先生が、そのまま店の外へと出ていく。

飲みかけのビールも、欠けたねぎまも置きっぱなし。唯一消えていたのは、灰皿横にあったタバコだけだった。


「今日ね、珍しくイットから誘われたんだ」

「えっ?」

「相談でもあるのかと思ったけど、(てい)よく使われたみたいだね」


晴士さんはビールジョッキに手を掛けながら、なぜか嬉しそうに微笑む。


「……晴士さんは、そんな一糸先生をどう思いますか?」

「イットらしいと思うよ。らしく(●●●)居てくれることが一番だよ、ほんと」


ん? さらりと返すわりに、どこか尾を引く言い方が気になった。


もう少し2人の話を聞いてみたい。そう思ったものの、私が切り出す前に、店主の声かけで定時を迎えてしまった。


「もしイットに苛められたら電話して。すぐに駆けつけるからね!」

「そのときはお願いします」