幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

私の問いかけに応えるように、カンナも遅れてこちらを見返す。でもそこには、無邪気な笑顔が標準装備の、私が知っているカンナはいなかった。


「今まで触れずにきたけどさ、何かあったよね?」


ガラス玉のような瞳にじっと見つめられ、心臓がドクンと反応する。


「……え? 何が?」

「昨日、学校の帰りに萩原に会ったんだよね。芙由は元気かって聞かれたよ」


カンナは無意識なのかもしれない。けど、普段よりも威圧的な喋り方が、神経を逆撫でる。


「別れた相手を真っ先に気にするなんてさ、まだ気持ちがあるってことだよね?」

「さぁね。楓の気持ちなんて知らないよ」


視線をカタログへ落とすと、湧き上がってくる感情を掻き分け、冷静さを引っ張り出す。これ以上、この話を引き延ばしたくない。


「萩原が『嫌いで別れたわけじゃない』って言ってたんだから、フッたのは芙由だよね」


――――やめて。


「ずっと側で見てきたから思うのかもしんないけど、……高校が離れるから別れるって話、正直信じてない」

「そんなこと言われても困るんだけど」


にぎやかな教室内でカンナの声だけが徐々に温度を失っていき、同調するかのように、私の言葉まで冷たくなる。


「芙由はさ、萩原との関係をすごく大切にしてたじゃん。だからこそ付き合うまでに時間かかったんでしょ?」


――――やめて。やめて、聞きたくない。


「不安ってだけで一方的に終わらせるとか、ありえない。ウチが知ってる芙由は、そうならないように動く人だもん」


強情でカンナらしくない声が、これでもかと心を掻き乱す。