幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

「まぁあれはやりすぎだったかな、ごめんね。――てことで、次はイットの番」

「は? 電話に気づかなかったから謝れって?」

「違うでしょ! 服に匂いが染み付いてるよ!」

「ああ。シンクのとこに土産置いてる」


晴士は不満げに鼻を鳴らすと、手近にあった紙とペンを取り、スマホを弄りだした。


「これ、芙由ちゃんに渡しといて」


一度折り畳まれた紙を、また開く。そこに書かれていたのは、晴士の連絡先だった。


「なんで」

「口実は何でもいいよ。俺が仲良くなれたら、芙由ちゃんが秘めてるものを引き出せるかもよ? イットよりも適任だと思わない?」


晴士の意見は、たぶん正しい。


少し距離が縮まったと思っても態度は変わらないし、椎名芙由には絶対的なラインがあるようだった。アイツの扱い方が分かるなら、頭を悩ます必要もなくなる。


「余計なちょっかい出さないって保証は?」

「俺がイットの敵に回ったことある?」


悪い話……では、ないか。


「渡すだけ、だからな」