幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

鼻で笑い飛ばせるほどのくだらない戯れ言。そう思っていたのに、『一生』が覆されるまであまり時間はかからなかった。



――晴士と椎名芙由が顔を合わせてしまったのは、奇しくも正体がバレた日。




「ちょっと! 送るとしても遅すぎじゃない? 梱包まで全部一人で終わったんだけど」

「ああ、悪い」


椎名芙由を途中まで送った後、焼き鳥屋で一息ついてアトリエへと戻ると、晴士は休憩室で既にビール缶を2本空けていた。


「まさか本当に送りオオカミ」

「違う。つかお前、なんであんな来るの早かったの?」

「だからさぁ、間に合いそうだよ、って電話入れたんですけどー。出なかったのはそっちじゃん!」


手土産として包んで貰った焼き鳥をキッチンに置き、ソファへ腰掛けるよりも先にタバコへ火を点ける。


「……あの赤ずきんちゃんが例の子でしょ」


確かにアイツの頭は赤いが、童話の主人公みたいな初々しさはない。ついでに、狼に襲われてもいない。


「ガードが硬そうだね。元彼でも引きずってるパターンかな」

「お前のそれ、わざとだろ」


笑いながら腰を上げた晴士は、冷蔵庫から2本の缶ビールを持って戻って来た。電話の件とイタズラと、これで手打ちってことで、乾杯してからビールを開ける。


「にしても、イットがあんな庇い方するとはね」

「人のことからかって、さぞ楽しかっただろうな」

「イットがあからさまに嫌そうな顔するから、ついね」


何がつい、だ。