幻燈ショー ~苦いだけの恋じゃない~

「先生のタバコが行方不明なのは椎名も知ってた。いくらでも嘘がつける状況で、でも、『自分のだ』って言い張ったんだよ。そんなんさ、全て解った上で『誰かを庇ってます』って言ってるようなもんだろ」


納得したと言わんばかりに晴士が頷いたので、残りの言い分はビールで流し込む。


アイツはタバコの香りに興味を示さない。

――何年もの間、上手く隠せているつもりのお前と違って。


「何で正直に話さないのかな?」

「わからん」


晴士に関しては口を出せる立場じゃないのでいい。いま考えるべきは、椎名芙由についてだ。

残り短かったタバコを灰皿へ押し付けると、キャンバスの前へと移る。


「話さない理由に心当たりは?」

「なくはない」


まずは黒。


「その子は誰かを庇ってるんだよね」

「相手は察しがつくけど、そいつもタバコ吸うとは思えない」


そして青。


「下手したら停学でしょ。今どき喫煙で箔が付くわけでもないだろうに、やってない罪を被るかなー?」

「そこなんだよ、問題は」


最後も黒。……いや、白? 塗り直しを想定するなら、白がラクか。


「理由がわかんねぇから面倒くさい」


キャンバス全体に色を伸ばし終えると、晴士の向かい側へと戻る。


「イットが関心を示す子、ね。お気にちゃんだね!」

「違うだろ」

「確かその子、綺麗系って話だったよね。会いたいなー」

「一生会うことはないだろうな」