東雲くんは【平凡】がわからない!

「俺が?」

わたしはうなずく。

「わたしもはじめは信じてなかったよ。というか、前の学校で中二病って嫌われたりしてたから、東雲くんもあのときのわたしと同じに見えて……その、同族嫌悪みたいになってたし…」

申し訳なくて小声になると、東雲くんが苦笑いをする。それは呆れているというより、少し困っているみたいな優しいものだった。

「だけど、東雲くんはいい人だし、ずっと優しいし、少なくともわたしなんかよりずっとちゃんとしていて……それで……真面目で真剣だったから」

転校してきてからずっと、わたしに優しかった。わたしだけでなく、光井さんや他の人にも優しかった。
少なくとも、彼はわたしに嘘をついたり、自分の都合で誰かを傷つけたりする素振りはなかった。

そんな東雲くんが言ったんだ。
魔術を使えるって。

手品かもしれない。思い込みかもしれない。わたしと同じ中二病かもしれない。

だとしても、それがなんだって言うんだ。

そうだとしても、その思い込みをバカにしたくない。

だって、前の学校でそうされてわたしはつらかった。
わたし、自分がされてつらかったことを人にしようとしていたんだ。

バカはわたしだ。

「だからわたしも真剣に聞くよ。東雲くんのこと信じる。だって信じたいから」

「若葉さん」

「それに……わたし、ワクワクドキドキしたよ。東雲くんの魔術」

小さい頃から夢見がちだったのわたし。
それで友達もいなくなっちゃった。

だけど……楽しかったんだ。

「だから、このワクワクを信じたいなって……思ったんだよ」

わたし、まだまだ中二病は治らないのかもしれないね。