東雲くんは【平凡】がわからない!

「あ、あの……わたし、協力するよ」

「え?」

東雲くんがパッと顔を上げる。
そこには目を丸くし、驚いた表情を浮かべていた。

え?

そしてわたし自身も驚いていた。
思わず自分の口から出たコトバに。

「若葉さん、協力って……?」

「わ、わたし…その……実は……っ」

一瞬、これ以上言葉をつむぐのをためらった。
顔が熱くなるのを感じる。

言うの?言ってしまうの?わたしの黒歴史。
やめようよ。恥ずかしいよ。思い出したくないよ。

それにこのまま東雲くんに関わり続けて大丈夫なの?
柳さんたちに嫌われないかな。また友達を失わないかな。

こわいな。


……でも、それでも……

今、東雲くんは真剣だった。真面目に話をしてくれた。
だからわたしも、少しでも答えたい。応えたいんだ。

「わたしっ、実は、昔から魔法とか魔術とか好きで、あ、憧れて、めちゃくちゃ本とか読んでいたの…!」

「…え……へえ、そっか」

「うん!それで、じ、実は、自分で魔法陣とか!呪文とか!そ、そそそういうの考えてたりしたし…っ」

顔から火が出そうだ。
ちょっとだけ汗もかいてきた。

でもわたしはそのまま話し続けた。

「だだだからっ、私は魔術士ではないけど、ちょっとくらい何か力になれるのではないかと、思っ、て……」

「………」

「どう……かな」

そこまで一気に言い切って、東雲くんの顔を見る。
東雲くんは驚いた顔のままでわたしを見つめていた。