東雲くんは【平凡】がわからない!

東雲くんが左手をわたしの手のひらにかざす。
そして人差し指をたて、さっきみたいに何かを宙に書いた。

…これってもしかして魔法陣かな。

「…若葉さん、ちなみに花粉症とか大丈夫?」

「へ?うん、平気だよ」

「いいな。俺、ひどい花粉症でさ、ブタクサとか出てきちゃったら地獄だよ」

「た、大変だね……」

ブタクサが出るかも知れないってこと?花の種類は選べないのかな。
つか魔術士でも花粉症になるのか…。
なんか思ってたのとちょっと違うな。

「……に在りし……よ。我の……に応え、その……を示せ」

東雲くんが小声でなにかを唱える。
彼の目が金色に輝いた。
すると、それに応えるようにわたしの手のひらが光りだした。

「!」

光はエメラルドグリーンに輝き出す。
ささやかな光ではあったけど、確かにわたしの手の中に存在していた。
こころなしか、ほんのりとあたたかい。

「す、すごい…!」

「生命の息吹よ、万物の種よ、ここに。
……ラ・フラ!」

カッ!

一瞬。手の中の光が激しくなる。
眩しくてつい目を瞑ってしまう。

でも、すぐに手の中に不思議な感覚。
なにか、ある。

「……な、に」

ゆっくりと目を開ける。

すると、わたしの手のひらで光の玉が浮かんでいた。
シャボン玉のような、ふわふわした頼りない光。
エメラルドグリーンのそれは、ふわり漂いながら徐々に姿を変えていく。