東雲くんは【平凡】がわからない!

「ごめんね、若葉さん。空気悪くしちゃって…」

「ふぐっ、べ、別に大丈夫!」

危うくお弁当をつめそうになりながら、わたしは返事をする。

「わ、わたしもちょっと困ってたし、光井さんがフォローしてくれて助かったよ」

それは本心だった。
光井さんが安心したように、少し表情をゆるめる。

「でも光井さんこそ大丈夫?柳さんとケンカしちゃったんじゃ…」

「ううん、大丈夫だよ。よくあるから。すぐに元に戻るし」

「よ、よくある…の…?」

こういうことが? 
それって結構しんどいんじゃないのかな。
でも光井さんがそれを受け入れているなら、転校生のわたしがあれこれ言うのは違う……よね。

わたしはそれ以上なにも言わずにお弁当を食べることにした。
光井さんもゆっくりとサンドイッチを口に運んでいる。

「あ、若葉さんはマリヤちゃんの方に行ってもいいからね。私のことは気にしないで」

「わ、わたしもここにいるよ。その、まだお弁当も食べてないし」 

「そう?わかった。ありがとう」

「……ううん」

ちょっとだけ気まずい昼休み。

結局、柳さんたちは5時間めが始まるまで戻ってこなかった。