東雲くんは【平凡】がわからない!

「あ、あのね…マリヤちゃん」

それまで黙って話を聞いていた光井さんが柳さんに声をかける。

「若葉さん、東雲くんと席がとなりだし、全く関わらないっていうのは無理だと思うよ」

わたしが戸惑っているのがわかったのか、フォローするように続けた。

「それに今日の放課後、東雲くんに校内案内してもらうことになってるんだよね。先生に言われて。……ね?」

優しく笑いながら同意を求めてくる光井さん。わたしはうなずいた。

「だからね、マリヤちゃんの心配はわかるけど……」
「わかった!ごめんね、よけーなこと言って」

光井さんの声を遮るように柳さんが言う。
その不機嫌な声に光井さんがひるんだ。

柳さんはお弁当箱を仕舞い、席をたった。

「トイレ」

そう言った柳さんに他の子たちも続く。
光井さんも行こうとしたが
「光井はまだ弁当残ってんじゃん。食べときなよ」
と言われ、うつむくように座り直した。

わたしは迷ったけど、まだやっぱりお弁当が残っている。
ここでお弁当残して追いかけたら変に思われるかなあと思い、とりあえず急いで食べてしまうことにした。

光井さんと二人残り、お弁当を食べる。
うつむいた光井さんは明らかに落ち込んでいるように見えた。