東雲くんは【平凡】がわからない!

「こら、そこ!!いくら自習だからと言って、無駄話をするな!」

「っ!?」

教壇に立つ社会科の先生に注意され、言いかけていた言葉は引っ込む。
東雲くんは「すみません」と先生に苦笑いした。
先生はこちらをにらむように見張っているので、これ以上はもう話せそうにない。
わたしはしぶしぶプリントを再開した。

でもハッキリ言って集中できない。
魔術なんてあるわけないじゃん。手品かなんかでしょ。という冷静な理性と。
でもあのときの東雲くんの様子はなんだか違っていた。普通じゃない感じがした。という感情的な本能。

わたしの中でぐるぐる回り、頭を完全に支配した。

「……はあ。だめだ」

結局プリントはその後ほとんど手を付けられず、一枚が残り、宿題になってしまった。


◆◇◆◇

昼休み。
みんな昼食をとるため移動し、教室は賑やかになる。

この学校は給食がなく、お弁当を持参するか購買でパンを注文するかのどちらか。
わたしはお弁当を持ってきている。

どうしよう。一人で食べるのはちょっと寂しい。
わたしから柳さんたちに声がかけていいかな…。

「若葉さん、一緒にお昼食べよ!お弁当?」

迷っていると柳さんの方から話しかけてくれた。

「……うん、ありがとう!」

心からホッとした。