東雲くんは【平凡】がわからない!

「どうかした、若葉さん」

そう言ってニッコリ。いつもの人の良い笑顔。
でも今の金色の目が思い出され、なんだか素直に笑い返すことができない。

…わたし、緊張してる。東雲くんに対して。

「…え、あの…花びらが…」

さっき拾った花びらを東雲くんに見せる。
東雲くんはニコニコ笑ったまま「ごめん、落としちゃったね」とそれを受け取った。

「あ、あの……この花びら」

窓から入ってきたんだよね。東雲くんの手から出てきたように見えるけど、違うよね。

心に浮かんだそれは、なぜか上手くコトバにならず出てこなかった。
でも東雲くんはわたしの言いたかったことを見透かしたかのように首を振る。

「窓から入ってきたんじゃない。俺が出したんだ」

「え」

「魔術で」

「っ!?」

そんなわけないじゃない。

…って言いたいのに、声が出ない。
胸がドキドキ大きな音を立てる。

ありえない、ありえない、ありえない。
魔術なんてない。それはわかっている。

東雲くん、変だよ。申し訳ないけどちょっとイタイよ。
そんなふうに思っているのに。……思いたいのに。
どこかでもしかして、と期待してるわたしがいる。

これじゃあ昔のわたしと変わらないじゃん。
中二病は卒業したはずでしょう?

「し、東雲くん……」

彼に何と伝えるか。
わからないまま口を開いた。