東雲くんは【平凡】がわからない!

校内案内。
それは…転校生のわたしにはありがたいけど。
でも、東雲くんと。しかもたぶんふたりきりで?
あわわわわ…。

「若葉さん?」

「え!」

「大丈夫?やっぱり用事ある?」

「う、ううん。大丈夫。でも、その…東雲くんこそ大丈夫?」

「ああ、俺は問題ないよ。じゃあ、そういうわけなんでよろしくね」

そう言って東雲くんは先に教室へと去っていく。

東雲くん……いい人、なんだよね。

放課後の校内案内なんてめんどくさくないはずないのに、そんなこと全然態度に出さないし。
それどころかわたしを気遣ってくれているし。

なのにわたしったら……

(うーーー…!)

自己嫌悪と黒歴史の間でかなり複雑だ。


「……若葉さん、大丈夫?なんだか顔色悪いよ?」

しかも隣で話を聞いていた光井さんにまで心配されてしまった。

「う、うん、大丈夫。なにもないよ」

「そう。それならいいけど…。
………あの」

光井さんが少しためらうように続けた。

「良かったら、放課後、私も一緒に行こうか?」