東雲くんは【平凡】がわからない!

学校につき、靴を履き替えるため下足場へ向かう。時間が早いせいか、まだあまり人はいない。

「あ、東雲くん」

「え!?」

光井さんの言葉にバッと身構える。
確かに東雲くんが靴を履き替えているところだった。
朝の光の中、彼の黒い髪が輝きをまとって見える。横顔でもわかる端整な顔立ち。
見た目は本当にかっこいのになあ。
脇に抱えているデカい魔術書が全てを台無しにしている。
つか、せめてカバンにいれて…。

東雲くんはこちらに気づくとニッコリ笑った。
「人畜無害」という言葉がぴったりな、人の良さそうな笑顔。

「おはよう。光井さん、若葉さん」

「おはよう、東雲くん」

「お、おはよう…東雲、くん……」

駄目だ。
どうしても苦手意識が態度に出てしまう。
東雲くん変に思ってないかな。

だけど東雲くんは特に表情を崩さずに笑顔のまま「そうだ」と話しかけてきた。

「若葉さん、今日放課後用事ある?」

「え、と、特には、ない…と思う」

唐突に言われて、頭の整理ができず咄嗟にそう答える。
用事はない……よね、たぶん。

「わかった。じゃあ、放課後校内案内するよ。昨日、先生から言われたんだ。よろしくね」

「え!?」