東雲くんは【平凡】がわからない!

転校2日めの朝。
わたしは少し早めの時間に通学路を歩いていた。

家から学校までは徒歩で約15分。
同じ制服を来た人たちに紛れるようにゆっくりと歩く。
まださすがに慣れなくて、ちょっと緊張する。
誰も気にしてなんかいないはずなのに、浮いている気さえする。
……この違和感が完全に消える頃、わたしはこの学校で上手くやれるようになっているのかな。

5分くらい歩いたとき、「あ…」という小さい声が聞こえた。
思わず振り向くと、すぐ近くに眼鏡をかけた女の子。

あ…このコ。昨日柳さんたちと一緒にいた……部活があるからと一人だけ途中で帰った女の子だ。
名前はえーと、確か……えーと……

「若葉さん、おはよう」

悩んでいると彼女の方から声をかけてくれた。しかも向こうはちゃんとわたしの名前を覚えてくれている。

「お、おはよう!…えっ…と…」

「あ、光井瑞希です。同じクラスで、昨日ちょっとだけお話した…」

「ご、ごめんね光井さん!お話したことは覚えてたんだけど、名前がちょっとだけ、その…抜けちゃって……」

うう…。
わたしったら失礼じゃない?
でも光井さんは気を悪くしたような様子は見せずに優しく笑った。 

「若葉さん、転校してきたばかりだもんね。全然気にしないで」