東雲くんは【平凡】がわからない!

「……どうして、捨てられなかったんだろう」

もう信じていないのに。魔術も魔法もないってわかっているのに。
こんなものにこだわったら、また引かれちゃう。友達なんて絶対できない。

わかっているのに。


「………」

手を伸ばし、段ボールにふれる。
パンパンに膨れた箱の質量から、どれほどたくさん詰まっているかがわかる。
これ……全部わたしが集めたんだよね。

少し。少しだけ。段ボールのテープを剥がして中をのぞく。

──すると自分で考えた魔法陣が見えた。
いろいろな呪文や魔法陣を書いたノートの表紙だ。
ちなみに六冊ある。

「ひぃややあああ、やっぱ無理!!」

音速でテープを貼り直して箱を奥につっこんだ。

「はあはあはあ…」

だ、駄目だ。
いま、わたしの黒歴史が一気に脳内に。

「忘れろ!忘れろ、わたし!わたしは生まれ変わった!」

そう、もうこれらには関わらない!
いつか捨てる!絶対捨てる!

そして……

「東雲くんにも関わらないように、気をつけよう」

そうわたしは決意を固めたのだった。